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代表インタビュー

Interview

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Q

先生が弁護士を始められたのは、なぜですか?

A

私は、学部時代に司法試験も通っていたのですが、法がなぜ、今ある形で法なのかという、基礎的な問題に強い関心があり、実務に進まず、研究者になりました。その後、40年間、ずっと研究を続けてきました。

しかし、京都大学を退職し、東京にきて、中央大学の法科大学院で教えるようになって、自分の考えてきた理論を実務で試したくなって、大学で教える傍ら、弁護士を始めました。

Q

先生の考えてこられた理論というのは、具体的にどんなものでしょうか。

A

私の理論は、法が法であるための背後の仕組みを考えるものなので、他の一般の法律学よりも、幅が広く、かつ深いという特徴があります。

法律も、契約法などの民法を中心に、民事訴訟法や破産法、会社法、憲法、行政法と、法横断的に、そのつどテーマをとりあげ、内外の文献を集中的に読んできました。また、私の特徴は、比較法社会学的な分析にあり、いつも、同じ法が外国、とくにアメリカでどうなっているのか、アメリカ社会の固有の特徴が、そこにどう関わっているのかを理解しようとしました。

法に関係する、弁護士制度や、司法制度も同じ視点から分析してきました。この社会や制度の背景と合わせて法を分析することで、たんに法の字面を追っているだけでは見えてこない、法の本当の姿を捉えることができます。それが、私の法理論です。

現在の弁護士実務においても、ただ、法をマニュアル的に適用するのとは違って、依頼者の目線で、依頼者の抱えた問題に即して、法を批判的に吟味する力ができている、と自負しています。

Q

他にも、研究を続けてきたことで、現在の弁護士業務にプラスしていると考えられることはありますか。

A

論理的な思考力や、何百頁もある原書を読み抜く語学力など、学者としての訓練は、もちろん、現在の私の実務、とくに国際法務に欠かせないものですが、意外と、今になって大切だったと思うものは、「職人気質」です。

学者というのは、ある程度学界で業績が認められ、名前が通るようになると、「名を惜しむ」というか、恥ずかしいものは書けないということで、ひたすら頑張ってしまうところがあります。私も、土日はもちろん、正月休みも返上して研究に打ち込んできました。

採算や効率性とは無縁の、ただ良いものを作るという職人の世界ですが、それは、いま、弁護士になって準備書面を書く場合でも、自分が納得できるものを書くということで頑張り、結果として、依頼者にも満足してもらえる仕事につながっていると思います。

Q

事務所のモットーをお聞かせ下さい。

A

「誠実に事件の処理にあたる」です。当たり前のことですが、普段、弁護士は多忙ですので、私たちも強く自戒して、手抜きをせず、依頼者のために精一杯、最善の弁護を行うよう努力するというのが、このモットーです。

Q

先生が個人的に弁護士の心構えとされておられることがありますか。

A

私が弁護士を始めて、しばらくして、自分がやっていることはこれだと思ったのが、3つのキーワード、「理」と「情」と「意」です。

法の世界では、何といっても理屈が大切で、弁護士も、理路整然と、理詰めの議論ができることが必要です。しかも、それを、とっさに口頭で、法廷で裁判官を説得したり、あるいは、依頼者との協議や、相手方との交渉場面で、法を分かりやすく説明し、納得してもらうことが求められます。この能力を身につけることが、まず第一です。

しかし、法的な事件であっても、目の前にあるのは、生身の人間が関わる取引であったり、紛争であったりします。この事件を扱うためには、人と人とをつなぐもの、道徳や倫理のような規範、あるいは、共感や配慮のような心の働き、そういうものに対して感受性を持っていないと、決して良い解決ができません。これが、第2の情です。

第3の意というのは、筋を通す、そして、度胸が試されるような局面では、ひるまない、ということです。法や裁判の世界では、100%確実というようなものはありません。あれば、弁護士のところに来ずに、自分たちで解決しているでしょうから、私たちは、多かれ少なかれ不確実な状況で、十分調べ、依頼者とも打ち合わせたら、後は、度胸を決めて当たるということが必要になってきます。

もちろん、引いたり、妥協したりも必要ですが、ここ一番というときは、毅然として主張するというのが、私が心構えとしていることです。

Q

事務所は国際法務の中でもインド法務に力を入れておられるようですが、インドにとくに注力されるのはなぜですか。

A

インドは、人口構成も圧倒的に若く、優秀な技術者もいて、伸びしろの大きな社会です。親日的でもありますし、日本企業も積極的な投資を行っています。

私も何度かインドに行っていますが、アジアとヨーロッパの両方の要素が入り交じった社会で、私自身、アメリカ生活が長く、アジア的なものと欧米の文化と、その両方を吸収してきて、インドには独特の親近感を覚えます。そのこともあって、しばらく前から、インドが関わる国際法務や国際課税事件を多く引き受け、また、その過程で、インドの法律も種々勉強してきました。インドの事務所とのネットワークもできています。

私たちの事務所は、基本的に、英語で折衝ができる限り、どこの国の国際法務でも扱えますし、実際、扱っていますが、インドには、その意味で、特別の専門性が蓄積されてきていますので、これからも、インドの法務には注力していこうと思っています。

Q

国際法務や企業法務の他に、先生が弁護士の社会的貢献として、大切になさっておられるお仕事がありますか。

A

離婚と子どもの問題には、特別の思い入れがあって引き受けています。私の妻は、3年前に亡くなりましたが、臨床心理学が専門で、生前、ものを書いたり、講演したりして、離婚しても、子どもが親に会えなくなるようなことがないように、啓発活動をしてきました。

私も、可愛い子どもを親が取り合い、子どもが親と生き別れになるのを見ていると、本当に心が痛みます。アメリカでは、昔から、隔週2泊3日で別居親の家に泊まりに行く形の面会交流が行われてきましたが、最近では、子ども部屋がどちらの家にもあって、週末だけでない、平日も半々で子どもの世話をする共同監護も広がっています。

「離婚には子どもは責任がない」と、アメリカではいいますが、日本も、親が離婚しても、子どもは、今まで通り、パパにも、ママにも可愛がってもらえるような社会に早くなって欲しいと願っています。