2016.06.28更新

 インド商工省産業政策促進局(Department Of Industrial Policy & Promotion/DIPP)は、2016年6月24日付プレスノートNo.5(以下「プレスノート」)にて、 FDIポリシーの大幅な改定を公表しました。2016年度統合版FDIポリシー(以下「統合版FDIポリシー」)が公表されてから初の改定となりますが、改定内容が多岐に渡るため、インドにおける外国直接投資に大きな影響を与える内容となっています。本稿では、2016年6月24日付プレスノートによるFDI規制に関する変更点について解説します。

 

1 参入条件以外のその他投資条件  

 プレスノートは「参入条件以外のその他投資条件」として、3.7.2項を追加しました。  

 この改定によって、インドにおける支店、駐在員事務所、プロジェクトオフィスその他事業拠点の形成に関して、その主要事業が防衛産業、通信、民間セキュリティー又は情報・放送に該当する申請者が、外国投資促進委員会又は関連省庁の承認を事前に取得している場合、本来必要なインド準備銀行の承認の取得が不要となりました。

 

2 農業及び畜産  

 プレスノートは、「農業及び畜産」について規定する5.2.1項を改定しました。  

 これまでは、気候や栄養、健康等が統制されている、管理された状況下での畜産分野に対する外国直接投資のみ許されていましたが、プレスノートによって、管理された状況下以外での畜産が許されることになりました。

 

3 製造業  

 プレスノートは「製造業」について規定する5.2.5項を改定しました。  

 従来、統合版FDIポリシー5.2.5項は、FDIポリシーに従い製造業セクターに対する外国投資は自動ルートとすること、及び、製造業者は、政府の承認を得ることなく、卸売業者又は小売業者を通じて(eコマースを含む)インドで製造したその製品を販売することができる旨規定していました。  

 プレスノートは、この内容に加えて、FDIポリシーの取引業セクターに関する規定に反しない限り、インドで製造・生産された食料品に関するEコマースを含む取引業は、自動ルートにより100%の外国直接投資が認められること、食料品小売分野に対する外国直接投資の申請は、中央政府による承認検討の前に、DIPPによって審理されることを新たに規定しました。  

 従前許されていなかった、食料品の製造・小売分野に対するFDI規制が大きく緩和され、食料品分野への投資が大きく可解放されたことになります。

 

4 防衛産業  

 プレスノートは「防衛産業」について規定する5.2.6項を改定しました。  

 防衛産業分野に対する外国直接投資は、従前は49%までが自動ルート、これを超える場合はインドに近代的かつ「最新」(state-of-art)の技術を導入する可能性があることを条件に政府ルートによる投資が認められていました。  

 プレスノートは、当該導入条件について、インドに近代的技術を導入する場合又はその他特記されるべき理由が認められることを条件に、政府ルートによる投資が認められる旨改定しました。「最新」(state-of-art)という文言を削除している点及びその他特記されるべき理由が認められる場合にも49%を超える投資が認められうる点で条件を緩和したということができます。  

 また、これまで政府エージェントについてのみ許されていた、武器法(the Arms Act, 1959)上の小型武器及び弾薬の製造が許されることになりました。

 

5 放送キャリッジサービス  

 プレスノートは「放送キャリッジサービス」について規定する5.2.7.1項を改定しました。  

 これまでは、通信ネットワーク拠点、家庭向け直接放送、ケーブルネットワーク等の放送キャリッジサービス分野への外国直接投資は、49%まで自動ルート、これを超える場合には政府ルートとされていました。  

 プレスノートは、放送キャリッジサービス分野に関して、自動ルートにより100%の外国直接投資が認められると改定しました。ただし、関係省庁からライセンスまたは認可を求めることなく実施される、49%を超える新規外国直接投資であって、その結果、会社の所有形態を変更させ又は既存株主から新規外国投資家への持分の移転させるものに関しては、政府承認が必要とされています。

 

6 民間航空  

 プレスノートは、「民間航空」のうち、空港事業について規定する5.2.9.1項及び空港輸送サービスについて規定する5.2.9.2項について改定しました。  

 従来、74%を超える既存空港事業への外国直接投資は、政府承認が必要とされていましたが、プレスノートはこの点を改定し、自動ルートにより100%の外国直接投資が認められるようになりました。  

 また、定期航空輸送サービス及び国内定期旅客航空分野に関しては、これまで自動ルートにて49%まで外国直接投資が認められていましたが(非居住インド人に関しては100%)、プレスノートは出資比率上限を撤廃し、100%までの外国直接投資を認め、49%までは自動ルート、49%を超える場合には政府ルートによるものとしました(非居住インド人は100%まで自動ルート)。

 

7 民間セキュリティー  

 プレスノートは、「民間セキュリティー」について規定する5.2.13項を改定しました。  

 政府ルートにて認められていました。プレスノートは、出資比率上限を49%から74%まで引き上げ、49%までは自動ルート、49%から74%までは政府ルートによるものとしました。 8 単一ブランド小売業  プレスノートは、「単一ブランド小売業」について規定する5.2.15.3項を改定しました。  

 出資比率が51%を超える形で単一ブランド小売業分野に外国直接投資を行う場合、商品購入価値の30%はインド国内で調達されなければならないという制限が課されています(ソーシング・ノルマ)。この例外として、これまでは、単一ブランド小売業を営む企業の製品が最新かつ最先端(“state-of-art” and ”cutting-edge”)であり、現地での調達が不可能な場合には、政府はソーシング・ノルマを緩和することができるものと規定されていました。

 プレスノートでは、単一ブランド小売業を営む企業の製品が最新かつ最先端(“state-of-art” and ”cutting-edge”)であり、現地での調達が不可能な場合、ソーシング・ノルマが事業の開始(第一店舗の開店)から3年間適用されないものとされました。

 

8 製薬業  

 プレスノートは、「製薬業」について規定する5.2.27項を改定しました。  

 従前は、製薬業分野に対する外国直接投資は、新規事業に関しては自動ルートにて100%までの出資が認められていたのに対して、既存事業へ投資は政府ルートにて100%までの出資が認められていました。  

 プレスノートは、既存の製薬業への投資条件を緩和し、74%までは自動ルート、74%を超える場合は政府ルートによるものと改定しました。ただし、製薬業分野における既存事業への投資条件として、製品水準及び研究開発費の維持、技術移転情報の報告義務が新たに課されました(5.2.27.3(iv)(a)~(c))。

 

 2016年6月24日付プレスノートNo.5の原文はこちら

 

棚瀬法律事務所 デリー駐在弁護士 遠藤 衛

投稿者: 棚瀬法律事務所

2016.06.27更新

相談内容:弊社は、医療機器をインドで製造・販売している会社です。弊社の顧客には、病院のみならず個人も含まれています。先日地域フォーラムという機関を通して、代理店から弊社商品を購入した個人のお客様から、弊社商品を使用したところ怪我をしたという苦情が届きました。製造物責任が問題になるのかと推測しますが、製造物責任をはじめとするインドの消費者保護法制はどのようになっているのでしょう。

 

1 インド消費者保護法制  

 インドにおける消費者保護は、主に消費者保護法(Consumer Protection Act, 1986)によって図られていますが、問題となる商品によっては、別途個別法による消費者保護が図られることもあります。なお、インドには日本の製造物責任法に相当する法律は存在しません。

 相談事例のケースでは、特に消費者保護法のほか、医薬・化粧品法(Drugs and Cosmetics Act, 1940)、も問題になりえますが、本稿ではインド消費者保護制度の中心となる消費者保護法に焦点を当てて解説します。

 

2 消費者保護法  

 日本の消費者保護法が実体法的側面に重きが置かれているのに対して、インドの消費者保護法は、消費者問題に関する特別な紛争解決手続きを規定することで消費者の保護を図っています。インドでは通常認められていない懲罰的賠償や消費者のクラスアクションといった企業責任を加重させる制度を導入している点に特徴があります。

 インドにおける消費者問題は、時に企業に対して甚大な損失を及ぼすため、軽視することはできません。代表的な事例として、スイス食品大手のネスレのケースが挙げられます。2015年に、インド食品安全基準局は、ネスレが販売する、インドの国民的インスタントヌードルであるMaggiに規定量を超える鉛が含有されているとして、その販売を差止めするとともに、消費者保護法に基づき、約64億ルピーに及ぶ補償金を求めるクラスアクションを提起し、インドでビジネスを行う企業に衝撃を与えました。

 消費者問題を検討するに際しては、誰が、どのような理由に基づいて、どういった請求をしてくるのかという点や、手続の概要を理解することが理解することが有益です。以下、消費者保護法が定める手続きの申立人、審理対象となる苦情や手続きの概要について解説します。

 

(1) 申立人  

消費者保護法は、同法が規定する特別手続きを利用できる申立人(complainant )の範囲として、以下のように規定しています(消費者保護法2条1項(c))

  

(i) 消費者  

 なお、消費者には、対価を支払って商品を購入したものや購入者に使用を許諾された商品のユーザーが含まれますが、再販売目的といった商業目的で商品を購入したものは消費者に含まれません。また、消費者にはサービスのユーザーや、当該ユーザーからサービスの利用を許諾されたものを含みますが、商業目的でサービスを利用するものは消費者から除外されています(消費者保護法2条1項(d))

(ii) 会社法上の登記をされている非営利消費者団体

(iii) 中央政府又は州政府

(iv) 共通の利益を有する1名以上の消費者

(v) 死亡した消費者の相続人又は代理人  

 

 このように、消費者保護法は商業目的がある場合を除いて、広く商品購入者又はサービス利用者が消費者に含まれると規定し、申立人適格を認めています。また、共通の利益を有する複数の消費者に対して申立人適格を与えることで、クラスアクションを認めています。特に中央政府が動くようなケースでは、係争額も大きくなりやすく、企業にとって大変なリスクとなります。

 相談者のケースでは、医療機器の購入者として病院や個人が想定されていますが、病院は、商業目的のもと医療機器を購入することが通常であり、苦情申立人に該当しないこととなります。これに対して、医療機器を購入した個人は、商業目的を備えないことが通常ですので、申立人に該当し得ます。

 

(2) 審理対象となる苦情

 審理対象を正確に理解することは、消費者保護法がどのような問題を消費者紛争と位置付けているかを把握することにつながり、ひいては消費者紛争の予防にも資するといえ、特に重要です。

 消費者保護法は、申立人が書面で行う以下の申立てが、審理対象となる苦情(complaint)に該当すると規定しています(消費者保護法2条1項(c))。

 

(i) トレーダー又はサービスプロバイダーによる不公正取引又は制限的取引

 なお、ここにいう不公正取引として、優良誤認表示といった不当表示又は不実表示、販売する意図のない割引価格の提示、商品コストの上昇を意図した商品の貯蔵、破棄、販売拒絶や模造品の販売等が列挙されています。

 「制限的取引」とは消費者に不当なコストや制限を課す価格操作や配送条件の設定等を意図した取引を意味し、配送遅延のコストを消費者に負担させる行為や、特定の商品購入の条件として他の商品の購入を要求する行為が含まれます。

(ii) 商品の欠陥

(iii) サービスの欠陥

(iv) トレーダー又はサービスプロバイダーによる法定価格、商品のパッケージ記載価格又は当事者が合意した価格等を超える代金請求

(v) 法が規定する安全基準に違反し、その公衆に対する販売が生命又は安全に危害を及ぼしうる商品、又はトレーダーが通常要求される注意を払えば公衆に対する危険性が予見可能であって、その公衆に対する販売が生命又は安全に危害を及ぼしうる商品

(vi) サービスプロバイダーが通常要求される注意を払えば公衆に対する危険性が予見可能であって、その公衆に対するサービスの提供が公衆の生命又は安全に危害を及ぼしうるサービス  

 

 このように、消費者保護法は多岐にわたる消費者紛争類型を苦情として認めることで、消費者の保護を図っています。なお、トレーダーには、商品の販売者はもとより、ディストリビューター、さらには製造業者が含まれるとされており(消費者保護法2条1項(J))、製造物の欠陥によって損害を被った場合、これらの者を相手取り紛争解決を図ることが可能です。相談者のケースは、このカテゴリーによって苦情を申し立てたものと考えられます。

 

(3) 地域フォーラムにおける手続概要

 消費者保護法は、消費者紛争を解決する特別な紛争解決機関として地域フォーラム、州フォーラム、ナショナル・コミッションについて規定しています。苦情の申立ては、その申立額等に応じて、地域フォーラム(申立額2,000,000ルピー以下)、州フォーラム(申立額2,000,000ルピー超え10,000,000ルピー以下)又はナショナル・コミッション(申立額10,000,000ルピー超え)にて審理されます。地域フォーラムにおいて下された命令に対しては州フォーラムに、州フォーラムにおいて下された命令はナショナル・コミッションにそれぞれ上訴可能です。

 地域フォーラムにおける手続具体例は以下のとおりです。まず、商品の苦情が問題となっているケースでは、まず地域フォーラムは、通常申立てを受理した日から21日以内に申立てられた苦情に正当性があるか否かに関して判断します(消費者保護法12条3項)。正当性があると判断された場合、地域フォーラムは、苦情の相手方に対して、苦情が認定された日から21日以内に、正当性があると認定された苦情のコピーを送付すると共に、原則30日以内の当該苦情に対する意見提出を命じなければなりません(消費者保護法13条1項)。

 その後、証拠調べ類似の手続が実施されます。試験所によって実施される鑑定類似の手続が導入されている他、いずれの手続も準司法的な手続となっており(同5項)、民事訴訟法における証人の召喚や証人尋問手続に関する規定が準用されております(同4項)。地域フォーラムは、申立苦情の相手方からの意見の提出を受けてから、原則として3ヶ月以内(試験所による検査が必要な場合、欠陥等の有無のための検査が必要なため、原則として5ヶ月以内)に苦情に対して判断を下さなければなりません(同3A項)。

 審理の結果、苦情に理由があると判断された場合、地域フォーラムは、以下の一つ又は複数の命令を下します(消費者保護法14条1項)。

 

(a) 試験所によって認定された係争商品に存在する欠陥の除去

(b) 欠陥の存在しない新品の類似商品との交換

(c) 申立人に対する、申立人が支払った代金の返金

(d) 相手方の過失によって消費者に発生した損失又は傷害に対して地域フォーラムが認定した補償金の支払い(地域フォーラムが適切と判断した場合には、懲罰的賠償も認定可能)

(e) 係争商品又はサービスに存在する欠陥の除去

(f) 不公正取引又は制限的取引の停止

(g) 販売のための有害商品提供の停止

(h) 販売中の有害商品の回収

(ha) 有害製品の製造停止又は有害サービスの提供停止

(hb) 多数の消費者に損失又は傷害が生じているものの、その消費者を容易に特定出来ない場合、地域フォーラムが認定した補償金の支払い

(hc) 誤解を招く広告を発行した相手方の費用負担において、当該誤解を招く広告の影響を中立化させる正しい広告の発行

(i) 適切な経費の支払い

 

 このように、消費者保護法は比較的短期間で終結する紛争解決手続を規定するとともに、地域フォーラム等に対して、柔軟な紛争解決手段を与えています。  相談者のケースでは、地域フォーラムが申立てられた苦情に理由があると判断した場合、代替商品の提供はもとより、製品によって生じた傷害の懲罰的賠償、さらには市場に出回っている製品の回収が命じられるおそれもなしとは言えません。

 

3 その他個別法による消費者保護  

 消費者保護法は、法が規定する安全基準に違反し、その公衆に対する販売が生命又は安全に危害を及ぼしうる商品の販売を苦情として認めていますが(消費者保護法2条1項(c)(v))、相談者との関係で問題となっている医療機器の安全基準には、医薬・化粧品法に規定があり、医薬・化粧品法の定める安全基準によって消費者の保護が図られていることとなります。

 

棚瀬法律事務所 デリー駐在弁護士 遠藤 衛

投稿者: 棚瀬法律事務所

2016.06.11更新

 

1 インドにおける粉飾決算と監査役の責任

 近時、日本において粉飾決算とこれにまつわる監査役の義務及び責任が取り沙汰され、議論されておりますが、インドにおいても同様の議論が存在します。その端緒が2009年に発生したSatyam Computer Services Limited(以下「Satyam」)の粉飾事件です。Satyam粉飾事件の発覚により、監査役の義務と責任のあり方が積極的に議論するに至り、また、同事件は2013年に改正されたインド会社法にも大きな影響を与えております。本稿では、日本会社法における監査制度と対比しつつ、Satyam事件の概要と新会社法における監査役の義務と責任について俯瞰します。

 

2 Satyam粉飾決算事件の概要

 2009年1月7日、インドの著名IT企業であるSatyamのCEOであるRamalinga Raju氏が辞職するとともに同社が粉飾決算を行っていることを告白しました。その粉飾は約7年間にわたって行われており、粉飾額は約11億米ドルに及びました。そして、この粉飾の結果、同CEOは懲役7年の宣告をうけています。

 同事件において、会計士による意図的な粉飾の見逃しが認定されたわけではないものの、粉飾を見抜けなかったことに重過失があったものとして、インド勅許会計士協会は、同社の監査に従事していた4名の勅許会計士に対し、生涯にわたって勅許会計士活動を禁止する処分を下すとともに、そのうち監査部門代表パートナーに約80万米ドルの最高額の経済制裁を課しました。また、同事件をきっかけに、Confederation of Indian Industries(CII)等の産業団体がコンプライアンスに関する提言を行い、インド企業省がコーポレートガバナンスに関する任意ガイドラインを制定するなど、監査役の役割と責任に関する議論が活発化しました。Satyam粉飾決算事件は、不正会計や非倫理的監査といったインドにおけるコーポレートガバナンス実務の欠点を浮き彫りにしたのです。

 これらの議論を踏まえ、2013年に大幅に改正されたインド会社法では、監査に関するコンプライアンス水準が大幅に引き上げられるに至りました。

 

3 インド会社法における監査制度

 

(1) 日本会社法との監査制度の差異
 インド新会社法下における監査制度の中身に踏み込む前提として、日本とインドの監査制度に関する主要な差異について説明します。

 まず、日本では、全ての会社に対して公認会計士等の外部の専門家に会計監査を実施させる義務が課されるわけではありませんが、インドにおいては、全ての会社が勅許会計士(日本における公認会計士)または会計事務所を監査役として選任し、会計監査を実施させ、しかもその結果を中央政府に報告しなければならない点で大きく異なります。

 また、日本における監査の範囲は、監査役に取締役の行為の差し止め権限に象徴されるように、会計監査のみならず業務監査にも及びますが、インドにおける監査役の監査範囲は会計監査に焦点が当てられており、監査役の業務範囲が異なります。

 

(2) 法定監査
 このように、監査役の主な役割が会計監査にあるため、インド会社法における監査制度は法定監査と呼ばれる会計監査を中心に設計されております。 監査役は、会社の財務書類や会計帳簿が法の定める会計基準に従って作成されていることを確実にするために監査報告書を作成しなければならず(会社法143条2項)、これを法定監査といいます。

 新会社法は第10章の139条から147条にかけて、法定監査に関連して監査役の選任、解任/辞任、適格、資格、非適格について規定しております。改正に伴い、監査役の役割と責任に関する新たな条文が導入されており、また、監査役の義務や非適格要件の範囲を拡大しております。

 

(a) 監査役の選任、解任、補充
 全ての会社は、監査役を選任しなければならず(会社法139条1項)、 原則としてその選任は株主総会普通決議によって行われます。具体的には、取締役会は、次期監査役を選任するために、勅許会計士協会等による処分の有無、監査役としての適格の有無、その会社の規模や要求に見合った経験や技能の有無を考慮した上、監査役候補者の名称を、定時株主総会において株主に対し推薦し(施行規則3条1項、3項)、これを受けて株主は定時株主総会において監査役を選任することとなります。なお、監査役は毎年の定時株主総会において株主の承認を受けなければなりません(会社法139条1項第1但書)。

 新たに設立された会社の場合、会社登記から30日以内に取締役会が最初の監査役を選任しなければなりませんが、これを怠った場合、当該取締役会は会社の株主等に当該事実を通知し、同株主等が90日以内に臨時株主総会によって最初の監査役を選任しなければなりません。当該監査役は最初に行われる定時株主総会の終結まで監査役の職務に服します(同条6項)。

 これに対して、任期満了前に監査役を解任するためには、非常に厳格な手続要件が要求されております。具体的には、中央政府の事前承認を得た上で、聴聞の機会の付与を前提とする株主総会特別決議を経る必要があります(会社法140条1項)。

 また、監査役に欠員が出た場合、取締役会は30日以内に取締役会決議によって監査役を選任しなければなりませんが、同欠員が監査役の辞任によって発生した場合、取締役会の選任に加えて、取締役会の推薦から3ヶ月以内に開催される株主総会の承認決議を得なければなりません(139条8項)。

 

(b) 監査役の任期
 監査役の任期は原則として5年1期とされております(139条1項)。 ただし、Satyam粉飾決算事件を受けて、同一監査役によって長期間におよぶ監査が実施されることによって重大な不正会計が行われる危険を避けるため、一定規模以上の会社に対して、監査役の再任に関する規制が導入されました。

 具体的には、(i)上場会社、(2)払込資本金額が1億ルピー以上の公開会社、(iii)払込資本金額が2億ルピー以上の非公開会社、(iv)公的借入等が5億ルピー以上の会社においては、5年1期(会計事務所の場合には再任も含め5年2期の計10年まで伸長可能)の任期満了後、5年間は当該監査役をその会社の監査役として選任することはできないこととされました(ローテーション義務。139条2項、施行規則5条)。なお、ローテーションの後任として、同一の関連組織に属する個人または会計事務所を監査役として選任することは許されません(施行規則6条3項2号)。

 

(c) 監査役の資格要件と非適格要件
 勅許会計士又はインドにおけるパートナーの過半数が勅許会計士である会計事務所(LLPを含む)が、監査役に就任することができます(会社法141条1項2項)。 旧会社法では、法人(LLPを除く)又は会社の役員若しくは従業員又は会社、その親会社、その子会社又はその関連会社に対して負債有するもの若しくは1,000ルピーを超えるその株式その他利害関係を有するものは、その会社において監査役として選任される適格を有しないとされておりました。

 しかし、法定監査実施における更なる独立性を確保するために、会社法は以下の法定監査人選任に関する非適格要件の範囲を拡大しました(141条3項)。

(i) 会社、その子会社、その親会社又はその関連会社との間で取引関係を有するもの
(ii) 親族が会社の取締役又は主要経営者に該当するもの
(iii) 他所において常勤で雇用されているもの又は20社を超えて監査役として選任されている個人または会計事務所のパートナー
(iv) 裁判所より不正行為に関し有罪宣告を受けたもので、かつ、同宣告日から10年が経過していないもの
(v) その子会社、関連会社等が禁止されている非監査サービスに従事しているもの

 

(d) 財務報告に関する内部統制及び不正行為の報告
 監査役は、財務報告に関する内部統制の有効性に関して、監査報告書において言及する必要があります(会社法143条3項(i))。ここにいう財務報告に関する内部統制とは、会社によって採用されている統制のとれた効率的な事業遂行を確保するためのポリシー又は手続きを意味するとされており、会社ポリシーの遵守、会社資産のセーフガード、不正行為や過失の予防・発見、会計記録の完備と正確性の確保、信頼性のある財務情報の適時の準備が含まれます(会社法134条5項(e)説明書)。

 また、Satyam粉飾決算事件の反省から、監査役が、その業務遂行の過程において、役員や従業員による1千万ルピー以上の不正行為が会社に対して行われたと信ずるに足りる理由があると認める場合、監査役はこれを中央政府に報告しなければならないこととされました(会社法143条12項、施行規則13条)。なお、不正行為が1千万ルピーに満たない場合、監査役は、監査委員会設置会社については同委員会に、非設置会社に関しては取締役会に不正行為を報告しなければなりません。

 

(e) 非監査業務提供の禁止

 監査役が多様な機能を果たすことによって発生しうる利益相反を排除するために、監査役を務める会社、その親会社又はその子会社に対して直接的又は間接的に提供が禁止される非監査業務が規定されました。具体的には投資アドバイザリーサービス、内部監査、マネジメントサービス、記帳代行サービス等が禁止されております(会社法144条)。 もし、同規制に反して非監査業務を自身が監査役を務める会社に提供した場合、非適格となり、監査役の地位から退くこととなります。これは、監査役の欠員として取り扱われます(会社法141条3項(i))。

 

(3) 内部監査
 内部監査は、組織のオペレーションを向上を目的とする、独立した、客観性を確保するためのコンサルティング活動であり、リスクのマネジメントやリスクコントロール及びガバナンス・プロセスの実効性や、財務的内部統制の実効性の評価及び向上を図るものです。

 会社法138条は、上場会社及び一定の会社において、勅許会計士、コスト会計士又は取締役会が定める専門家等が内部監査役として選任されることを求めており、会社従業員も内部監査役に就任することができます。

 内部監査役の業務範囲と機能に関しては、会社法及びその施行規則には規定されておらず、監査委員会又は取締役会が内部監査役と協議し、内部監査実施の範囲、機能、任期、手順について構築しなければなりません。

 

(4) 監査委員会の組成
 上場会社、払込資本金額1億ルピー以上又は総売上10億ルピー以上又は負債総額5億ルピー以上の公開会社は、独立取締役が多数を占める3名以上の取締役から構成される監査委員会を組成しなければならないとされ、(会社法177条1項)、また、議長を含む過半の取締役が、財務書類を読み解く能力を有するものでなければならないとされています。

 監査委員会は、会社監査役の選任、報酬及び任期に関して推薦する責任があり、監査役の独立性を検査し、財務報告に関する内部監査、リスクマネジメントシステムその他財務的メカニズムの安全性を評価しなければなりません。

 監査委員会は、監査役に、内部監査システムや、監査業務に関して意見を求めることができ、また、取締役会に提出される前に財務書類を検査することができます。また、法定監査または内部監査のマネジメントに関連する問題について、議論することもできます。

 

(5) 内部通報制度の構築
 会社法の改正に伴い、上場会社、公衆からの預かり金を実施している会社、銀行等金融機関から5億ルピー以上の借り入れを行っている会社に対して、会社の不正行為や反倫理的行為、懸念されるべき事項を、取締役または従業員が報告するための内部通報制度を構築する義務が導入されました(施行規則7条)。内部通報制度の導入にあたっては、同制度を利用したものが差別的取扱いを受けないために十分なセーフガードを設けることが求められております。

 

4 おわりに
 Satyamの粉飾決算事件をうけて、新しい会社法は、より透明性の高い監査システムを導入する共により高度な義務と説明責任を監査役に課し、インドにおけるコーポレートガバナンスの水準を向上させましたが、インド政府は、改正会社法には更なる改正が必要であるとする要請をなお受けており、インドにおける監査制度の今後の動向にはなお注視する必要があります。

 会社法の実際に運用していく上で発生する問題点に関して助言をするために2015年より設置された会社法委員会は、2016年2月に、専門家機関、産業団体、インド証券取引委員会、インド準備銀行といった規制実施団体から受領した情報をもとに作成したレポートをリリースしました。例えば、同委員会は、毎年の定時株主総会における監査役の不承認に株主総会普通決議が要求されるのに対して、任期満了前の監査役解任に中央政府の承認と株主総会特別決議が要求されるという不整合を理由に、監査役の承認手続きを廃止することを推奨しています。その後、2016年度会社法改正法案が、下院に提出されましたが、同法案では、株主総会による監査役承認手続きを廃止する条項が盛り込まれています。

 

棚瀬法律事務所 デリー駐在弁護士 遠藤 衛

ZEUS法律事務所(デリー)インド法弁護士 スニル ティヤギ

(本記事は、インドの法律事務所であるZEUS法律事務所と共同で執筆されています) 

以上

投稿者: 棚瀬法律事務所

2016.01.14更新

相談内容 : 弊社はインドの現地法人として事業を行っているのですが、先日、現地NGOから、会社法の定めるCSR支出として、同NGOに寄付をしないかとの打診を受けました。弊社は、CSR活動を通して一定の金員を支出しなければならないのでしょうか。支出義務があるとして、どのように支出する必要があるのでしょうか。また、同NGOを介してCSRとして資金支出するにあたって、注意点はありますか。

 

1 インド会社法の定めるCSR義務の概要

 

 純資産が50億ルピー以上、売上が100億ルピー、または純利益5千万ルピー以上の会社は、CSR委員会(Corporate Social Responsible Committee)を設置し、同委員会が推薦するCSRポリシー(Corporate Social Responsibility Policy)に従い、直近3会計年度の平均純利益額の2パーセントに相当する額をCSR活動として支出しなければなりません(会社法135条1項)。この平均純利益額は税引き前の額となります。同責任を負担するに至った場合、会社は具体的に以下の手順を踏む必要があります。

 

2 CSR責任を負担する場合に企業が取るべき手続

 

(1) CSR委員会の組成

 まず、取締役会は、取締役3名以上から構成されるCSR委員会の組成を議決する取締役会決議を行う必要があります。このCSR委員会を構成する取締役の少なくとも1名は、独立取締役である必要があります。ただし、独立取締役の選任要件(会社法149条4項)を満たさない非上場公開会社又は非公開会社に関しては、独立取締役をCSR委員会の一員として選任する必要はありません(規則5条(1)(i))。また、取締役の数が2名の非公開会社に関しては、CSR委員会を構成する取締役数も2名となります(規則5条(1)(ii))なお、CSR委員会の構成は、取締役会報告書にて開示されなければなりません(会社法135条2項)。

 

(2) CSR委員会によるCSRポリシーの策定とその推薦

 CSR委員会は、CSRポリシーを策定し、これを取締役会に推薦します。このCSRポリシーには、後述のように、実施すべきCSR活動の内容等を記載する必要があります。

 

(3) 取締役会によるCSRポリシーの承認とCSR活動の実施

 取締役会は、CSR委員会が推薦したCSRポリシーを承認し、これを取締役会報告書及び会社のウェブサイトに掲載しなければなりません(同4項(a))。このポリシーに従い、取締役会はCSR活動を実施し、直近3会計年度の平均純利益額の2パーセント相当額を支出する必要が有ります(同4項(b))。 なお、取締役会は前期不足支出分を次期に繰越すことは出来ますが、前期超過支出分を次期に繰り越すことは認められません。

 

3 CSRポリシー作成の注意事項

 CSRポリシーには、会社法スケジュールVIIに列挙された活動に含まれるCSRプロジェクト又はプログラムの内容、実行様式、スケジュールの一覧が記載されなければなりません。また、CSR委員会が同プロジェクト又はプログラムをモニタリングするプロセスについても記載される必要が有ります(規則6条1項)。さらに、CSR活動によって生じた利益が事業利益を構成しないことを明示する必要があります(規則2条2項)。なお、インド国外での活動は、CSRによる支出として認められません(規則4条4項) スケジュールVII記載の活動及びCSR活動として認められない活動は以下のとおりですが、インド企業省は、スケジュールVII記載の活動の範囲は広く解釈されると表明しています。

 

(1) スケジュールVII列挙事項

i. 貧困、飢餓及び栄養失調の撲滅、予防医療及び公衆衛生促進並びに入手可能な安全な飲料水の製造

ii. 特に子ども、女性、高齢者、障害者の職業能力を向上させる特別な教育・雇用を含む教育ならびに生活向上プロジェクトの推進

iii. 男女平等促進、女性の社会的地位向上促進、女性および孤児のための家・宿泊施設の設立、老人ホーム、デイケアセンターその他高齢者向けの施設の設立、社会的および経済的に劣後するグループが直面する不平等を解消する方法

iv. 環境の持続可能性、生態系バランスの確保、動植物保護、動物の繁栄、森林農業の保護、天然資源の保全ならびに土壌、空気および水質の維持

v. 建築物、歴史的な遺跡及び美術作品の復元を含む国家遺産、芸術および文化の保護、公立図書館の設立、伝統芸術及び手工芸品の発展

vi. 地方でのスポーツ活動、全国的に認識されたスポーツ、パラリンピック・スポーツ及びオリンピック・スポーツを促進する訓練

vii. “Prime Minister`s National Relief Fund”又は中央政府が社会経済発展のために設立した他のファンド並びに指定されたカースト、種族その他発展の遅れた階級、マイノリティ、及び女性のための救済基金並びに福祉への寄付

viii. 中央政府の承認を得た、大学施設内設置のテクノロジー・インキュベーターへの寄付

ix. 地方発展プロジェクト

 

(2) CSR活動として認められない活動

i. 会社従業員及びその家族に対してのみ利益になるCSRプロジェクト及びプログラム

ii. その会社の通常の事業において実施される活動

iii. 法令上の義務を履行する上で必要な活動

iv. 会社法182条の規定する政党に対する直接・間接的な寄付

v. マラソン、授賞、慈善寄付、広告、TVプログラムのスポンサー契約等の一過性のイベント

vi. PPP又は都市インフラ領域における政府職員又は議員の能力構築支援

vii. 持続的な都市開発及び都市輸送

 

 

4 NGO等との間で契約を締結する上での注意点

 相談のケースでは、NGOに寄付する方法が問題とされておりますが、NGO等に対する寄付がCSRの支出と認められるためには条件があり、注意が必要です。まず、会社は非営利目的会社(会社法8条)、登記されている財団、組合に対して寄付する方法によってCSR活動を行うこともできますが、その会社が設立した財団等でない限り、当該非営利目的会社等が3年間同種の活動に従事したことを示す活動記録が必要であります(規則4条2項(a))また、当該非営利目的会社等が、専ら、CSR活動又はスケジュールVII記載の活動を実施するために設立されたものでなければなりません。

 さらに、会社は、実施されるプロジェクトまたはプログラム、資金活用の様式、同プロジェクトまたはプログラムの監視及びレポートのメカニズムを明確にする必要が有ります(規則4条2項(b)) したがって、会社がNGO等に寄付する方法でCSR活動を行う場合、当該NGO等が上記要件を満たしているか確認する必要が有ります。また、NGO等に対して寄付するにあたっては、契約書を作成し、支出資金によって実施されるプロジェクトの中身、資金使途の制限、NGOの活動内容や資金支出入の監視体制に関する契約条項を作成すべきです。

 

 

5 CSR責任違反の効果

CSR委員会の設置義務及びCSR活動資金の支出義務違反に対する罰則はありませんが、CSR活動資金の支出義務を怠った場合、その理由を取締役会報告書にて報告する義務があり(会社法135条5項第2但書)この報告を怠った場合には罰則が科されます(会社法134条8項)。

 

6 税務上の取扱い

CSR活動は税務上費用として計上することは認められておりません。他方、所得税法上、Prime Minister`s National Fundに対する寄付や地方を発展させるプロジェクト、技能向上プロジェクト、農業拡張プロジェクト等の一定の活動に関しては、税優遇措置が採られております。

棚瀬法律事務所 デリー駐在弁護士 遠藤 衛

投稿者: 棚瀬法律事務所

2015.08.04更新

インド法務取扱実績例アップデート

 

棚瀬法律事務所は、インド法務に関するリーガルサービスの提供に注力しておりますが、その実績例を紹介します。

 

輸入・販売に関する規制のリサーチ
消毒効果が認められる物質を製造する機械の輸入・販売を計画している企業から、インドにおいて当該製品の輸入・販売の際に課される規制のリサーチを受任し、Drug and Cosmetics Act, 1940、Insecticide Act, 1968、The Manifacture, Storage and Hazardous Chemical Rules, 1989等の20弱に及ぶ法令の調査結果をレポートしました。

 

移転価格課税訴訟のサポート
当局から移転価格課税による追徴を求められたインドで製造業を営む企業から、移転価格課税の訴訟遂行につき全面的なサポートを依頼され、法令・判例の調査にはじまり、主張の骨子の作成、準備書面のドラフト、現地法律事務所と協働しながらの訴訟遂行等、移転価格課税訴訟に関する包括的なリーガルサービスを提供しました。

 

Permanent Establishment課税に関するアドバイスの提供
インド国内に拠点を持つ大手自動車メーカーに従業員を派遣することを考えている企業から、当該派遣がPermanent Establishmentと認定され課税されるリスク(PE課税リスク)について調査・分析を依頼され、日印租税条約、OECDガイドラインやインド裁判所の判例を調査・分析し、これに関するアドバイスをレポートしました。

 

Joint Venture Agreementのドラフト
インド国内で少数派株主としてJoint Venture Companyの設立を検討している企業から、Joint Venture Agreement作成に関するアドバイスの提供とそのドラフトを依頼され、インド会社法(Companies Act, 2013)の規定に照らして少数派株主の権利が確保される形でJoint Venture Agreementをドラフトしました。

 

Joint Venture Companyの清算・再編
インド国内で多数派株主としてJoint Venture Companyを運営している企業から、当該Joint Venture Companyの清算等に関するJoint Ventureパートナーと交渉のサポートを依頼され、インド会社法、インド契約法(Contract Act,1872)やJoint Venture Agreement等に照らし依頼者にとって交渉上有利となる事項を調査し、その調査結果をレポートしました。

 

ロイヤリティ契約のドラフト
インド国内でJoint Venture Companyを運営する企業から、当該企業とJoint Venture Companyとの間で締結するロイヤリティ契約に関するアドバイスの提供とそのドラフトを依頼され、インドの送金規制や課税リスク等に配慮しつつ、ロイヤリティ契約をドラフトしました。

 

インド競争法(独禁法)に関するリサーチ
インド国内で製造業を営む企業から、商品の価格設定に関するインド競争法(The Competition Act, 2002)上の規制についてアドバイスの提供を依頼され、インド競争法や過去のCompetion Comission Indiaの過去の審判等を分析し、当該企業が行おうとしている価格設定行為がインド競争法に抵触する危険についてアドバイスしました。

 

インド請負労働法に関するアドバイス
インド国内に拠点を持つ大手自動車メーカーに従業員を派遣することを考えている企業から、当該派遣がインド請負労働法(Contract Labour(Regulation and Abolishion) Act, 1970)に抵触する危険性に関しアドバイスの提供を依頼され、インド請負労働法や判例等を調査し、インド請負労働法抵触の危険性に関する調査結果をレポートしました。

 

不動産についての外資規制に関するアドバイス
インド国内で製造業を営む企業から、その所有する土地の活用に関してアドバイスの提供を依頼され、不動産の取得・譲渡に関する外国為替管理規則(Acquisiiton and transfer of immovable property in Indian Regulations, 2000)等の関連法令を調査し、その結果をレポートしました。


(弁護士 遠藤 衛)

投稿者: 棚瀬法律事務所

2015.06.26更新

Ministry of Corporate Affiarsは、会社法462条に基づき、2015年6月5日に、非公開会社に対する会社法の適用に関して、通達により下記の点につき会社法を修正等しました。各修正点について、俯瞰します。なお、以下Serial numberについては、「SN」と表記します。 

 

1 関連当事者の範囲の修正(重要度” 高”)

 

 SN1.は、非公開会社に関して、関連当事者取引規制について規定するインド会社法188条との関係で、関連当事者の定義規定であるインド会社法2条76項のうち(viii)が適用されないこととしました。

 インド会社法188条によれば、会社が関連当事者(related party)との間で一定の取引を行う場合、原則として、取締役会決議による取締役会の承認等を取得する必要があります。そして、インド会社法2条76項(viii)は、親会社、子会社若しくは関連会社又は親会社の別の子会社が関連当事者に含まれるとしています。

 したがって、従来、非公開会社が親会社、子会社若しくは関連会社又は親会社の別の子会社と188条所定の取引を行う場合、原則として、逐一取締役会の承認を得る必要がありました。しかし、本通達によって、非公開会社については、このような承認は不要となりました。 

 

2 株主の権利内容の修正(重要度”低”)

 

 SN2.は、非公開会社との関係で、基本定款又は附属定款に記載する方法によって、株主権の内容について規定するインド会社法43条及び47条の適用を除外できる旨修正しました。

 インド会社法43条は株式の種類やその内容を、インド会社法47条はすべての株主が議決権を有することや、投票の方法による株主総会決議における議決権数が払込資本金額に比例すること等を規定しておりますが、同条の適用を除外することで、より柔軟な株主総会の決議ルールの策定が許容されることになります。 

 

3 株主割当発行の申込期間の短縮(重要度”中”)

 

 SN3.は、新株の株主割当発行に関する通知様式について規定するインド会社法62条1項(a)(i)の但書として、以下の規定を追加しました。

Provided that notwithstanding anything contained in this sub-clause and subsection (2) of this section, in case ninety per cent. of the members of a private company have given their consent in writing or in electronic mode, the periods lesser than those specified in the said sub clause or sub section shall apply,

この規定の追加により、非公開会社において、株式の90パーセント以上を保有する株主の書面又は電磁的様式による同意を得た場合には、15日を下回る申込期間を設定できるようになりました。この修正により、非公開会社はより迅速に新株の株主割当発行が可能となります。 

 

4 ストックオプション発行手続きの修正(重要度”低”)

 

 SN4.は、非公開会社との関係で、ストックオプションの発行について規定するインド会社法62条1項(b)について”special resolution”という文言を”ordinary resolution”という文言に置き換えました。

 ストックオプションの発行の際には株主総会特別決議が要求されていましたが、この修正により、非公開会社がストックオプションを発行する際には、株主総会普通決議で足りるものとされました。 

 

5 自己株式取得に関する例外(重要度”中”)

 

 SN5.は、自己株式取得を規制するインド会社法67条が、非公開会社との関係で、以下の場合には適用されないものとしました。

 (a)他の法人が、当該非公開会社の株式資本の払込みを行っておらず、

 (b)当該非公開会社が銀行、金融機関又は他の法人から借入を行っている場合、その借入額が、払込資本金額の2倍の額又は5000万Rsのいずれかより低い額を下回っており;かつ

 (c)自己株式の取得を行う際に当該非公開会社の当該借入に対する支払いについて不履行がない場合

この修正により、上記要件を満たす非公開会社は会社法67条の定める自己株式取得規制に服さないこととなります。

 

6 預り金規制に関する例外(重要度”低”)

 

 SN6.は、会社が預り金することを認められる要件について規定するインド会社法73条2項の要件(a)乃至(e)が、一定の場合に非公開会社に適用されないものとしました。

 インド会社法73条1項は、会社が公衆から預り金をすることを原則的に禁止しておりますが、同2_項は、定時株主総会における普通決議を経ること等の条件の他に、同項(a)乃至(f)が規定する各要件の充足が認められる場合に、特定の株主等から預り金をすることを許容しています。
 SN6.の修正により、非公開会社に関しては、預り金の総額が払込済資本金及び自由準備金の合計額を超えず、その詳細を別途規則の定める方法に従い登録した場合には、(a)乃至(e)に規定される、回状の発行等の要件を充足することなく、預り金をすることが認められることになりました。 

 

7  株主総会手続に関する定款による修正(重要度”高”)


 

 SN7.は、株主総会手続等について規定するインド会社法101条乃至107条及び109条が、非公開会社に対しては、定款によりその適用を排除できるものとしました。各条項が規定内容は以下のとおりです。

 101条:株主総会招集通知の記載事項や発送時期等の方法に関して

 102条:株主総会招集通知に添付されるべき付属書類に関して

 103条:株主総会の定足数に関して

 104条:株主総会の議長の選出に関して

 105条:議決権の代理行使に関して

 106条:議決権の権利行使制限に関して

 107条:挙手の方法による株主総会決議に関して

 109条:投票の方法による株主総会決議に関して

 この修正により、非公開会社は、定款で別途規定することにより、株主総会手続に関して、より柔軟なルール設計が可能となりました。

 

8 決議に関する必要的提出書類の範囲の修正(重要度"中")

 


 SN8.は、決議に関する書面の提出を義務付ける、インド会社法117条のうち、同条3項(g)が非公開会社に適用されないものとしました。

 インド会社法117条3項(g)は、インド会社法179条3項所定の必要的取締役会決議事項に関する取締役会決議の写しを、登録官に対する提出が必要な書類として指定する規定です。

 この修正により、非公開会社は、179条3項所定の事項に対する取締役会決議の写しを登録官に提出する必要がなくなりました。

 

9 監査役の就任上限会社数の算定方法に関する修正(重要度"低")


 

 SN9.は、監査役の非適格要件について規定するインド会社法141条3項のうち、(g)に関して、以下の修正を加えました。


"twenty companies"の文言の後に、""other than one person companies, dormant companies, small companies and private companies having paid-up share capital less than one hundred crore rupees"の文言を挿入。


 監査役として就任できる会社数は、一名につき20社未満と限られておりますが、この修正により、一人会社、休眠会社、小規模会社、払込資本金額10億Rs以下の非公開会社は、この20社の数に含まれないこととなりました。

 

10 取締役選任保証金等の適用除外(重要度"中")


 

 SN10.は、取締役選任の際に保証金等を要求するインド会社法160条が、非公開会社に適用されないものとしました。

 インド会社法160条は、株主総会決議で新たな取締役を選任するにあたり、自筆の立候補の通知及び10万Rs以上の保証金の支払を要求しております。

 この修正により、非公開会社においては取締役選任に際する当該保証金の支払が不要となりました。

 

11 取締役一括選任規制に対する修正(重要度"低")


 

 SN11.は、取締役の個別的選任について規定するインド会社法162条が、非公開会社に適用されないものとしました。

 インド会社法162条1項及び2項は、事前の出席株主の同意がない限り、2名以上の取締役を一つの決議で選任する株主総会決議の進行を許容しておらず、これに違反する決議は無効であると規定しております。

 この修正により、非公開会社においては、取締役の一括選任が許容されることとなりました。

 

12 事業譲渡に関する適用除外(重要度"高")


 

 SN12.は、事業譲渡に関して株主総会特別決議を要求するインド会社法180条が、非公開会社に適用されないものとしました。

 この修正により、非公開会社は株主総会特別決議を経ることなく事業譲渡を行うことが出来るようになります。



 

13 報告が必要な取締役の利害関係の範囲の修正(重要度"中")

 


 SN13.は、取締役の利害関係の情報公開に関して定める、インド会社法184条2項が、非公開会社に適用されないものとしました。

 インド会社法184条2項は、会社と、その会社の取締役と特別な関係がある法人等が契約を締結する場合に、当該取締役に対して当該契約に関する利害関係を報告する義務を課し、また、当該取締役会への参加を制限しておりますが、この修正により、非公開会社に関しては、取締役に対する当該報告義務が免除され、取締役会への参加が許容されることとなります。



 

14 取締役に対する貸付規制の例外(重要度"中")


 

 SN14.は、取締役に対する貸付規制に関して定める、インド会社法185条が、以下の場合には非公開会社に適用されないものとしました。

 (a)他の法人が、当該非公開会社の株式資本の払込みを行っておらず、

 (b)当該非公開会社が銀行、金融機関又は他の法人から借入を行っている場合、その借入額が、払込資本金額の2倍の額又は5000万Rsのいずれかより低い額を下回っており;かつ
 (c)当該非公開会社がインド会社法185条が規定する取引を行う際に、当該借入に対する返済について不履行がない場合

 この修正により、 上記要件を満たす非公開会社は会社法185条の定める貸付規制に服さないこととなります。

 

15 関連当事者の議決権行使規制の適用除外(重要度"中")

 


 SN15.は、関連当事者規制について規定するインド会社法188条のうち1項第2但書が非公開会社に適用されないものとしました。

 インド会社法188条1項第1但書は、一定の関連当事者取引に関して、取締役会決議の他、株主総会普通決議を要求しておりますが(注:Companies (Amendment) Act, 2015により特別決議から普通決議に改正)、同第2但書は、当該株主総会決議において関連当事者が議決権を行使することができない旨規定しております。

 この修正により、非公開会社に関しては、関連当事者取引の際に必要とされる株主総会決議において、関連当事者が議決権を行使できるものとされました。

 



16 経営責任者規制に関する適用除外(重要度"高")

 


 SN16.は、経営責任者の選任について規定するインド会社法196条のうち、4項及び5項が、非公開会社に適用されないものとしました。

 インド会社法196条4項は、取締役会が、インド会社法197条及びSchedule Vの規定する適格要件に従って、managing director、whole-time director及びmanagerを選任し、また、支払うべき対価の承認をしなければならないこと等を規定しております。また、同5項は、取締役会で選任された経営責任者が、後に開催される株主総会において承認されなかった場合に、取締役会選任後の取締役の行為が無効にならない旨規定しております。

 この修正により、非公開会社に関しては、Schedule Vの規定する主要経営者適格要件や報酬支払条件に縛られることなく、managing director、whole-time director、managerを選任し、これら経営責任者に対して報酬を支払うことが可能となりました。




Exemptions to Private Companies under section 462 of CA 2013

http://www.mca.gov.in/Ministry/pdf/Exemptions_to_private_companies_05062015.pdf

 (弁護士 遠藤 衛)

 

投稿者: 棚瀬法律事務所

2015.06.18更新

2015年5月25日、THE COMPANIES (AMENDMENT) ACT, 2015(以下「CAA」)が成立し、同年5月29日に、13条及び14条を除くすべての条項が施行されました。そこで、CAAによりインド会社法がどのように改正されたのか、各修正点を俯瞰します。

 

⒈ 最低資本金規制の撤廃(重要度“中”)

 CAA2条1項は、非公開会社の定義規定であるインド会社法2条68項の、“of one lakh rupees or such higher paid-up share capital”という文言を削除し、同2項は、公開会社の定義規定であるインド会社法2条71項の“of five lakh rupees or such higher paid-up capital,”という文言を削除しました。

 インド会社法は、従来、非公開会社及び公開会社の定義に最低資本金を組み込むことにより、資本金として要求される最低額を規律しておりました。しかし、この改正により、非公開会社及び公開会社の最低資本金の額に関する文言が削除され、従来要求されていた株式会社の最低資本金に関する規制が撤廃されました。

 

⒉ 社印に関する文言の修正(重要度“低”)

 CAA3条は、インド会社法9条の“and a common seal”という文言を削除しました。

 インド会社法9条は、会社登記の効力発生日について規定する条項ですが、会社設立証明書記載の日時より社印を利用して法人活動をなしうることも規定しております。CAAの施行によりインド会社法上、社印が必ずしも不可欠なもので無くなることをうけ、社印に関する文言を削除するものです。

 

⒊ 事業開始に関する申告制度の廃止(重要度“中”)

 CAA4条は、事業の開始(commencement of business)に関して規定するインド会社法11条を削除しました。

 従来、インド会社法11条により会社が事業を開始するためには、株式引受にかかる払込の支払い及び最低資本金額を超える払込がなされたことの申告の登録が必要とされていました。しかし、CAA2条によって最低資本金規制が撤廃されたことをうけ、その申告を不要とするため、申告に関する会社法11条を削除するものです。

 

⒋ 社印に関する文言の修正(重要度“低”)

 CAA5条は、会社の事務所の登録に関して規定するインド会社法12条のうち、"(b) have its name engraved in legible characters on its seal"という規定を“(b) have its name engraved in legible characters on its seal, if any;”という規定に置き換えました。

 CAAの施行によりインド会社法上、社印が必ずしも不可欠なものでなくなることを受け、”if any”という文言を追加するものです。

 

⒌ 代理権付与手続の修正(重要度“高”)

 CAA6条1項は、会社の代理行為に関して規定するインド会社法22条2項の“under its common seal”という文言を、“under its common seal, if any,” という文言に置換し、下記の但書を追加しました。また、同2項は、会社の証書に関して規定するインド会社法22条3項のうち‘‘and have the effect as if it were made under its common seal”という文言を削除しました。

“Provided that in case a company does not have a common seal, the authorisation under this sub-section shall be made by two directors or by a director and the Company Secretary, wherever the company has appointed a Company Secretary.”;

 従来、インド会社法は社印が押印された書面によって会社の代理権を付与するものとしておりました。この改正により、社印が存在する場合にはその押印が、存在しない場合には取締役及び会社秘書役の権限付与が(会社秘書役が存在しない場合には取締役2名による権限付与が)、会社の代理人を選任するに際して、必要となりました。また、会社の証書作成に際して要求されていた社印の押印が不可欠なものではなくなりました。

 

⒍ 株式証書の様式に関する変更(重要度“中”)

 CAA7条は、株式証書について規定する会社法46条1項のうち“issued under the common seal of the company”という文言を “issued under the common seal, if any, of the company or signed by two directors or by a director and the Company Secretary, wherever the company has appointed a Company Secretary”という文言に置換しました。

 従来、社印が押印されている株式証書が明白な証拠(prima facie)として取り扱われていましたが、この改正により、社印の押印又は取締役と会社秘書役の署名(会社秘書役が選任されていない場合には、取締役2名の署名)のある株式証書が、株主の資格を証明する明白な証拠になることとされました。

 

⒎ 預り金規制違反に関する罰則の新設(重要度“低”)

 CAA8条は、預り金規制違反の罰則を規定するインド会社法76条Aを以下のとおり新設しました。

 “76A. Where a company accepts or invites or allows or causes any other person to accept or invite on its behalf any deposit in contravention of the manner or the conditions prescribed under section 73 or section 76 or rules made thereunder or if a company fails to repay the deposit or part thereof or any interest due thereon within the time specified under section 73 or section 76 or rules made thereunder or such further time as may be allowed by the Tribunal under section 73,—

(a) the company shall, in addition to the payment of the amount of deposit or part thereof and the interest due, be punishable with fine which shall not be less than one crore rupees but which may extend to ten crore rupees; and
(b) every officer of the company who is in default shall be punishable with imprisonment which may extend to seven years or with fine which shall not be less than twenty-five lakh rupees but which may extend to two crore rupees, or with both:
Provided that if it is proved that the officer of the company who is in default, has contravened such provisions knowingly or wilfully with the intention to deceive the company or its shareholders or depositors or creditors or tax authorities, he shall be liable for action under section 447.”

 この改正により、76A条の新設により、預り金規制に違反した場合、会社に対し1千万Rsを超える1億Rs以下の罰金が、違反した会社役員に対し7年以下の懲役及び/又は250万Rsを超える2千万Rs以下の罰金が科されることになります。


⒏ 閲覧・謄写文書範囲の修正(重要度“低”)
 CAA9条は、決議の登録に関するインド会社法117条の3項(g)の但書として、以下の規定を追加しました。

 “Provided that no person shall be entitled under section 399 to inspect or obtain copies of such resolutions; and” 

 インド会社法399条は、何人に対しても登記官によって管理されている書面の閲覧・謄写を認めておりますが、この但書の新設により、会社の業務執行に関する取締役会決議の写しに関しては、同条の閲覧・謄写が認められないこととなりました。
会社の機密情報を含むおそれのある取締役会決議の一般的閲覧・謄写を制限することで、企業機密の保護を図る趣旨です。

⒐ 配当可能額算出方法に関する追記(重要度“中”)
 CAA10条は、配当の宣言及び支払いに関して規定するインド会社法123条の第4但書として、以下の規定を追加しました。

 “Provided also that no company shall declare dividend unless carried over previous losses and depreciation not provided in previous year or years are set off against profit of the company for the current year.”

 この但書の新設により、過去の損失を繰越し、過去の年度の資産減価と当年度の利益を相殺しない限り、配当の宣言が出来なくなりました。

 配当可能額の適正な算出を確保する趣旨から、このような但書が新設されたものです。

10.未配当株式の取扱いに関する説明書の追加(重要度“低”)
 CAA11条1項は、一定期間配当の支払い等が行われない株式の移転について規定するインド会社法124条6項のうち、“unpaid or unclaimed dividend has been transferred under sub-section (5) shall also be”という文言を “dividend has not been paid or claimed for seven consecutive years or more shall be”という文言に置換し、説明書として“Explanation.—For the removal of doubts, it is hereby clarified that in case any dividend is paid or claimed for any year during the said period of seven consecutive years, the share shall not be transferred to Investor Education and Protection Fund.’’という規定を追加しました。

 従前の規定では、インド会社法124条5項の規定によりthe Unpaid Dividend AccountからInvestor Education and Protection Fundにその配当が移動される株式についてのみ、同ファンドに移転する旨規定されておりましたが、同5項の場合に限られず、7年以上配当の支払及び請求がなかった株式が同ファンドに移転することとなりました。もっとも、そもそも7年間一度も配当が為されない場合等には、株式が移転されない旨説明書きで明記されています。

11. 取締役会報告書として提出すべき書類の追加(重要度“低”)
  CAA12条は、取締役会報告書について規定するインド会社法134条3項に関して、“(ca) details in respect of frauds reported by auditors under sub-section (12) of section 143 other than those which are reportable to the Central Government;”という条項を新設しました。

 CAA13条は、一定額以下の会社役員等の不正に関しては、取締役会報告書に記載する旨規定しており、これを受けて、取締役会報告書として提出すべき書類に、インド会社法143条が定める監査役により作成される不正に関する報告書(中央政府に報告するものを除く)を加えるものです。

12. 不正に関する報告先の修正(重要度“低”/未施行)
 CAA13条は、監査役の会社役員等の不正に関する中央政府に対する報告義務について規定するインド会社法143条12項を、以下の規定に置換しました。

“(12) Notwithstanding anything contained in this section, if an auditor of a company in the course of the performance of his duties as auditor, has reason to believe that an offence of fraud involving such amount or amounts as may be prescribed, is being or has been committed in the company by its officers or employees, the auditor shall report the matter to the Central Government within such time and in such manner as may be prescribed:
Provided that in case of a fraud involving lesser than the specified amount, the auditor shall report the matter to the audit committee constituted under section 177 or to the Board in other cases within such time and in such manner as may be prescribed:
Provided further that the companies, whose auditors have reported frauds under this sub-section to the audit committee or the Board but not reported to the Central Government, shall disclose the details about such frauds in the Board's report in such manner as may be prescribed.”
 この改正により、会社法施行規則で別途規定される金額以下の不正に関しては、監査役は、中央政府の替わりに、監査委員会(もし存在しない場合には取締役会)に報告することとされ、会社はその詳細を取締役会報告書に記載することでこれを公開することとされました。

13. 関連当事者取引に対する総括的承認(重要度“中”/未施行)
 CAA14条は、関連当事者取引の監査委員会の承認・修正について規定するインド会社法177条(4)(iv)について、但書として"Provided that the Audit Committee may make omnibus approval for related party transactions proposed to be entered into by the company subject to such conditions as may be prescribed;”という規定を追加しました。

 従来、関連当事者取引で要求される監査委員会の承認について、総括的な承認が許容されるのか必ずしも明示されていませんでしたが、この改正により、監査委員会は、関連当事者との取引に関して、総括的な承認を作成出来るようになりました。総括的な承認を認めることで、個別の案件ごとに逐一監査役会の承認を経る必要を無くし、会社運営の負担を軽減するものです。

14. 対取締役貸付のルールの変更(重要度“大”)
 CAA15条は、取締役等に対する貸付けの規制について規定するインド会社法185条について、但書(b)に続けて、以下の規定を追加しました。
"(c) any loan made by a holding company to its wholly owned subsidiary company or any guarantee given or security provided by a holding company in respect of any loan made to its wholly owned subsidiary company; or
(d) any guarantee given or security provided by a holding company in respect of loan made by any bank or financial institution to its subsidiary company:
Provided that the loans made under clauses (c) and (d) are utilised by the subsidiary company for its principal business activities.”
 この改正により、親会社の、完全子会社に対する貸付、保証又は担保の提供並びに金融機関による子会社に対する貸付に関する保証又は担保の提供が例外的に許容されることとなりました。
親会社が完全子会社に対し運転資金を融資しすること等はしばしば行われますが、親会社の取締役が子会社の取締役を兼任している場合、このような行為はインド会社法185条1項の規制対象となっておりました。このような不都合を解消するために、親会社による完全子会社等に対する融資等を許容するものです。

15. 関連当事者取引で要求される決議基準の変更(重要度“大”)
  CAA16条は、関連当事者取引に関する取締役会の承認について規定する会社法188条1項及び同3項中、”special resolution”という文言を”resolution”という文言に置換し、第四但書として以下の規定を追加しました。
"Provided also that the requirement of passing the resolution under first proviso shall not be applicable for transactions entered into between a holding company and its wholly owned subsidiary whose accounts are consolidated with such holding company and placed before the shareholders at the general meeting for approval.”
 従来、会社法施行規則の定める一定額の払込資本金額を超える会社の取引又は一定額を超える取引を行う場合、株主総会特別決議が要求されていましたが、この改正により、株主総会普通決議で足りることとなりました。また、親会社と会計が連結している完全子会社と取引に関しては、普通決議も不要となりました。



16. 調査対象行為の指定表現の修正(重要度“低”)
 CAA17条は、インド会社法212条6項に関して、"the offences covered under sub-sections (5) and (6) of section 7, section 34, section 36, sub-section (1) of section 38, sub-section (5) of section 46, sub-section (7) of section 56, sub-section (10) of section 66, sub-section (5) of section 140, sub-section (4) of section 206, section 213, section 229, sub-section (1) of section 251, sub-section (3) of section 339 and section 448 which attract the punishment for fraud provided in section 447”という文言を "offence covered under section 447”という文言に置き換えました。
212条6項では、Serious Fraud Investigation Officeの調査対象になりうる行為が具体的条項を適示する形で列挙されていますが、いずれの条項においても447条に従い処罰されることが明記されているため、逐一条項を適示す必要性が乏しい状況にありました。そこで、単に447条により規律される違反行為が、調査対象となりうる旨を指摘することで、記載の簡素化を図るものです。

17. 社印に関する規定の文言の修正(重要度“低”)
  CAA18条は、検査役報告書の社印による認証に関して規定するインド会社法223条4項(a)のうち、"by the seal”という文言を"by the seal, if any,”という文言に置き換えました。
CAAの施行により、社印が必ずしも不可欠なものでなくなることを受け、”if any”という文言を追加するものです。

18. 会社登記抹消事由の変更(重要度“低”)
 CAA19条は、株式引受人が払込みを行わない場合に登記官に会社の登記抹消権限を認める会社法248条を削除しました。
この改正により、株式引受人による払込の不履行が、登記官による会社登記抹消事由ではなくなりました。

19. 特別審判廷の設置範囲の修正(重要度“低”)
 CAA20条は、全国会社法審判所所長による特別審判廷の設置に関して規定するインド会社法419条4項について、”winding up”という文言を削除しました。
改正前会社法によれば、全国会社法審判所所長は会社解散の処理に当たって特別審判廷を設置するものとされていましたが、この改正により、会社解散の際には特別審判廷が利用されないこととされました。

20. 特別裁判所の設置範囲の修正(重要度“低”)
 CAA21条は、会社法違反行為を審理する特別裁判所の設置について規定するインド会社法435条に関して、"trial of offences under this Act”という文言を"trial of offences punishable under this Act with imprisonment of two years or more”という文言に置き換え、但書として以下の規定を追加しました。

 "Provided that all other offences shall be tried, as the case may be, by a Metropolitan Magistrate or a Judicial Magistrate of the First Class having jurisdiction to try any offence under this Act or under any previous company law."

 従前は、すべての会社法違反行為が特別裁判所の審理に服すると規定されていましたが、この改正により、懲役2年以上の罰則が科される可能性のある会社法違反行為のみが、特別裁判所の審理に服することとなりました。なお、それ以外の違反行為は、首都圏治安判事又は一級治安判事の審理に服するものとされております。
 

21. 特別裁判所の審理対象に関する文言の修正(重要度“低”)

  CAA22条は、会社法違反行為を審理する特別裁判所の審理対象について規定するインド会社法436条1項(a)中、"all offences under this Act”という文言を "all offences specified under sub-section (1) of section 435”という文言に置き換えました。
CAA21条によるインド会社法435条の改正を受けて、文言を修正するものです。

22. 会社法適用除外等の指定における期間算出方法の修正等(重要度“低”)
 CAA23条は、会社法適用除外等に関する中央政府の権限について規定する会社法462条に関し、第3項、4項として、下記の規定を追加しました。
 (3) In reckoning any such period of thirty days as is referred to in sub-section (2), no account shall be taken of any period during which the House referred to in sub- section (2) is prorogued or adjourned for more than four consecutive days.
 (4) The copies of every notification issued under this section shall, as soon as may be after it has been issued, be laid before each House of Parliament.”
 この改正により、中央政府の議会に対する通達案提出に関する30日の期間算定に際して、4日を超える形で連続して議会が延会、休会した場合、この期間は上記30日の期間に算入されないものとされました。また、同条に基づく通達が、公布後直ちに各議会に提出されるものとされました。

THE CCOMPANIES (AMENDMENT) ACT, 2015

http://www.mca.gov.in/Ministry/pdf/AmendmentAct_2015.pdf

 

Commencement Notification of Companies (Amendment) Act, 2015

http://www.mca.gov.in/Ministry/pdf/Notification_31052015.pdf

以上

(弁護士 遠藤 衛)

投稿者: 棚瀬法律事務所

2015.01.19更新

 

 2013年9月12日よりその一部が施行された、インド新会社法は、現在、全470条中約60パーセントに該当する283条が施行されており、183条が未施行の状態にあります。現地報道によりますと、インド企業省(MCA)は、当該未施行部分の大部分を、2015年末までに施行する予定で動いております。

”政府関係筋によると、インド企業省は、Companies Act 2013(以下、インド新会社法)未施行部分約40パーセントの大部分について、2015年末までに、三段階のフェーズを経て、施行予定。
 第一段階として、まず、6ヶ月以内に、登録鑑定士(registered valuers)を含む鑑定(Valuation)に関する規定を施行し、第二段階として、2015年度末までに会社法委員会(Company Law Board)に関する37条文を、その後に、第三段階として、国内会社法審判所(National company Law Tribunal)に関する136条文が施行予定。”と報じられております(以上、現地経済紙 Economic Timesより)。

 2014年4月1日に新会社法中会社運営の重要部分に関する条項の多くが施行されて以来の、新会社法施行に関する動きとなります。
 未施行条文として、組織再編や会社清算 等の領域に関するものが残されているものの、これら組織再編や会社清算等の施行時期が当該報道において必ずしも明示されておりません。もっとも、第三段階における施行条文数が136条文とその数が多く、これらの手続きに国内会社法審判所の関与が予定されていることからすると、組織再編や会社清算等に関する条文に関しても、第三段階で施行されることが予定されていると推測されます。
 なお、第三段階に施行予定の条文に関しては、現在、法的障害のため、議論が停滞しているとも上記記事中にて報じられております。また、未施行条文の大部分を2015年末までに施行予定としているにもかかわらず、第三段階の施行時期については明示されておりません。

(弁護士 遠藤 衛)

投稿者: 棚瀬法律事務所

2014.12.12更新

これからインド法務に関する記事を更新してまいります。

よろしくお願い致します。

投稿者: 棚瀬法律事務所

棚瀬法律事務所03-6205-7930
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