2016.01.14更新

相談内容 : 弊社はインドの現地法人として事業を行っているのですが、先日、現地NGOから、会社法の定めるCSR支出として、同NGOに寄付をしないかとの打診を受けました。弊社は、CSR活動を通して一定の金員を支出しなければならないのでしょうか。支出義務があるとして、どのように支出する必要があるのでしょうか。また、同NGOを介してCSRとして資金支出するにあたって、注意点はありますか。

 

1 インド会社法の定めるCSR義務の概要

 

 純資産が50億ルピー以上、売上が100億ルピー、または純利益5千万ルピー以上の会社は、CSR委員会(Corporate Social Responsible Committee)を設置し、同委員会が推薦するCSRポリシー(Corporate Social Responsibility Policy)に従い、直近3会計年度の平均純利益額の2パーセントに相当する額をCSR活動として支出しなければなりません(会社法135条1項)。この平均純利益額は税引き前の額となります。同責任を負担するに至った場合、会社は具体的に以下の手順を踏む必要があります。

 

2 CSR責任を負担する場合に企業が取るべき手続

 

(1) CSR委員会の組成

 まず、取締役会は、取締役3名以上から構成されるCSR委員会の組成を議決する取締役会決議を行う必要があります。このCSR委員会を構成する取締役の少なくとも1名は、独立取締役である必要があります。ただし、独立取締役の選任要件(会社法149条4項)を満たさない非上場公開会社又は非公開会社に関しては、独立取締役をCSR委員会の一員として選任する必要はありません(規則5条(1)(i))。また、取締役の数が2名の非公開会社に関しては、CSR委員会を構成する取締役数も2名となります(規則5条(1)(ii))なお、CSR委員会の構成は、取締役会報告書にて開示されなければなりません(会社法135条2項)。

 

(2) CSR委員会によるCSRポリシーの策定とその推薦

 CSR委員会は、CSRポリシーを策定し、これを取締役会に推薦します。このCSRポリシーには、後述のように、実施すべきCSR活動の内容等を記載する必要があります。

 

(3) 取締役会によるCSRポリシーの承認とCSR活動の実施

 取締役会は、CSR委員会が推薦したCSRポリシーを承認し、これを取締役会報告書及び会社のウェブサイトに掲載しなければなりません(同4項(a))。このポリシーに従い、取締役会はCSR活動を実施し、直近3会計年度の平均純利益額の2パーセント相当額を支出する必要が有ります(同4項(b))。 なお、取締役会は前期不足支出分を次期に繰越すことは出来ますが、前期超過支出分を次期に繰り越すことは認められません。

 

3 CSRポリシー作成の注意事項

 CSRポリシーには、会社法スケジュールVIIに列挙された活動に含まれるCSRプロジェクト又はプログラムの内容、実行様式、スケジュールの一覧が記載されなければなりません。また、CSR委員会が同プロジェクト又はプログラムをモニタリングするプロセスについても記載される必要が有ります(規則6条1項)。さらに、CSR活動によって生じた利益が事業利益を構成しないことを明示する必要があります(規則2条2項)。なお、インド国外での活動は、CSRによる支出として認められません(規則4条4項) スケジュールVII記載の活動及びCSR活動として認められない活動は以下のとおりですが、インド企業省は、スケジュールVII記載の活動の範囲は広く解釈されると表明しています。

 

(1) スケジュールVII列挙事項

i. 貧困、飢餓及び栄養失調の撲滅、予防医療及び公衆衛生促進並びに入手可能な安全な飲料水の製造

ii. 特に子ども、女性、高齢者、障害者の職業能力を向上させる特別な教育・雇用を含む教育ならびに生活向上プロジェクトの推進

iii. 男女平等促進、女性の社会的地位向上促進、女性および孤児のための家・宿泊施設の設立、老人ホーム、デイケアセンターその他高齢者向けの施設の設立、社会的および経済的に劣後するグループが直面する不平等を解消する方法

iv. 環境の持続可能性、生態系バランスの確保、動植物保護、動物の繁栄、森林農業の保護、天然資源の保全ならびに土壌、空気および水質の維持

v. 建築物、歴史的な遺跡及び美術作品の復元を含む国家遺産、芸術および文化の保護、公立図書館の設立、伝統芸術及び手工芸品の発展

vi. 地方でのスポーツ活動、全国的に認識されたスポーツ、パラリンピック・スポーツ及びオリンピック・スポーツを促進する訓練

vii. “Prime Minister`s National Relief Fund”又は中央政府が社会経済発展のために設立した他のファンド並びに指定されたカースト、種族その他発展の遅れた階級、マイノリティ、及び女性のための救済基金並びに福祉への寄付

viii. 中央政府の承認を得た、大学施設内設置のテクノロジー・インキュベーターへの寄付

ix. 地方発展プロジェクト

 

(2) CSR活動として認められない活動

i. 会社従業員及びその家族に対してのみ利益になるCSRプロジェクト及びプログラム

ii. その会社の通常の事業において実施される活動

iii. 法令上の義務を履行する上で必要な活動

iv. 会社法182条の規定する政党に対する直接・間接的な寄付

v. マラソン、授賞、慈善寄付、広告、TVプログラムのスポンサー契約等の一過性のイベント

vi. PPP又は都市インフラ領域における政府職員又は議員の能力構築支援

vii. 持続的な都市開発及び都市輸送

 

 

4 NGO等との間で契約を締結する上での注意点

 相談のケースでは、NGOに寄付する方法が問題とされておりますが、NGO等に対する寄付がCSRの支出と認められるためには条件があり、注意が必要です。まず、会社は非営利目的会社(会社法8条)、登記されている財団、組合に対して寄付する方法によってCSR活動を行うこともできますが、その会社が設立した財団等でない限り、当該非営利目的会社等が3年間同種の活動に従事したことを示す活動記録が必要であります(規則4条2項(a))また、当該非営利目的会社等が、専ら、CSR活動又はスケジュールVII記載の活動を実施するために設立されたものでなければなりません。

 さらに、会社は、実施されるプロジェクトまたはプログラム、資金活用の様式、同プロジェクトまたはプログラムの監視及びレポートのメカニズムを明確にする必要が有ります(規則4条2項(b)) したがって、会社がNGO等に寄付する方法でCSR活動を行う場合、当該NGO等が上記要件を満たしているか確認する必要が有ります。また、NGO等に対して寄付するにあたっては、契約書を作成し、支出資金によって実施されるプロジェクトの中身、資金使途の制限、NGOの活動内容や資金支出入の監視体制に関する契約条項を作成すべきです。

 

 

5 CSR責任違反の効果

CSR委員会の設置義務及びCSR活動資金の支出義務違反に対する罰則はありませんが、CSR活動資金の支出義務を怠った場合、その理由を取締役会報告書にて報告する義務があり(会社法135条5項第2但書)この報告を怠った場合には罰則が科されます(会社法134条8項)。

 

6 税務上の取扱い

CSR活動は税務上費用として計上することは認められておりません。他方、所得税法上、Prime Minister`s National Fundに対する寄付や地方を発展させるプロジェクト、技能向上プロジェクト、農業拡張プロジェクト等の一定の活動に関しては、税優遇措置が採られております。

棚瀬法律事務所 デリー駐在弁護士 遠藤 衛

投稿者: 棚瀬法律事務所

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