2016.06.28更新

 インド商工省産業政策促進局(Department Of Industrial Policy & Promotion/DIPP)は、2016年6月24日付プレスノートNo.5(以下「プレスノート」)にて、 FDIポリシーの大幅な改定を公表しました。2016年度統合版FDIポリシー(以下「統合版FDIポリシー」)が公表されてから初の改定となりますが、改定内容が多岐に渡るため、インドにおける外国直接投資に大きな影響を与える内容となっています。本稿では、2016年6月24日付プレスノートによるFDI規制に関する変更点について解説します。

 

1 参入条件以外のその他投資条件  

 プレスノートは「参入条件以外のその他投資条件」として、3.7.2項を追加しました。  

 この改定によって、インドにおける支店、駐在員事務所、プロジェクトオフィスその他事業拠点の形成に関して、その主要事業が防衛産業、通信、民間セキュリティー又は情報・放送に該当する申請者が、外国投資促進委員会又は関連省庁の承認を事前に取得している場合、本来必要なインド準備銀行の承認の取得が不要となりました。

 

2 農業及び畜産  

 プレスノートは、「農業及び畜産」について規定する5.2.1項を改定しました。  

 これまでは、気候や栄養、健康等が統制されている、管理された状況下での畜産分野に対する外国直接投資のみ許されていましたが、プレスノートによって、管理された状況下以外での畜産が許されることになりました。

 

3 製造業  

 プレスノートは「製造業」について規定する5.2.5項を改定しました。  

 従来、統合版FDIポリシー5.2.5項は、FDIポリシーに従い製造業セクターに対する外国投資は自動ルートとすること、及び、製造業者は、政府の承認を得ることなく、卸売業者又は小売業者を通じて(eコマースを含む)インドで製造したその製品を販売することができる旨規定していました。  

 プレスノートは、この内容に加えて、FDIポリシーの取引業セクターに関する規定に反しない限り、インドで製造・生産された食料品に関するEコマースを含む取引業は、自動ルートにより100%の外国直接投資が認められること、食料品小売分野に対する外国直接投資の申請は、中央政府による承認検討の前に、DIPPによって審理されることを新たに規定しました。  

 従前許されていなかった、食料品の製造・小売分野に対するFDI規制が大きく緩和され、食料品分野への投資が大きく可解放されたことになります。

 

4 防衛産業  

 プレスノートは「防衛産業」について規定する5.2.6項を改定しました。  

 防衛産業分野に対する外国直接投資は、従前は49%までが自動ルート、これを超える場合はインドに近代的かつ「最新」(state-of-art)の技術を導入する可能性があることを条件に政府ルートによる投資が認められていました。  

 プレスノートは、当該導入条件について、インドに近代的技術を導入する場合又はその他特記されるべき理由が認められることを条件に、政府ルートによる投資が認められる旨改定しました。「最新」(state-of-art)という文言を削除している点及びその他特記されるべき理由が認められる場合にも49%を超える投資が認められうる点で条件を緩和したということができます。  

 また、これまで政府エージェントについてのみ許されていた、武器法(the Arms Act, 1959)上の小型武器及び弾薬の製造が許されることになりました。

 

5 放送キャリッジサービス  

 プレスノートは「放送キャリッジサービス」について規定する5.2.7.1項を改定しました。  

 これまでは、通信ネットワーク拠点、家庭向け直接放送、ケーブルネットワーク等の放送キャリッジサービス分野への外国直接投資は、49%まで自動ルート、これを超える場合には政府ルートとされていました。  

 プレスノートは、放送キャリッジサービス分野に関して、自動ルートにより100%の外国直接投資が認められると改定しました。ただし、関係省庁からライセンスまたは認可を求めることなく実施される、49%を超える新規外国直接投資であって、その結果、会社の所有形態を変更させ又は既存株主から新規外国投資家への持分の移転させるものに関しては、政府承認が必要とされています。

 

6 民間航空  

 プレスノートは、「民間航空」のうち、空港事業について規定する5.2.9.1項及び空港輸送サービスについて規定する5.2.9.2項について改定しました。  

 従来、74%を超える既存空港事業への外国直接投資は、政府承認が必要とされていましたが、プレスノートはこの点を改定し、自動ルートにより100%の外国直接投資が認められるようになりました。  

 また、定期航空輸送サービス及び国内定期旅客航空分野に関しては、これまで自動ルートにて49%まで外国直接投資が認められていましたが(非居住インド人に関しては100%)、プレスノートは出資比率上限を撤廃し、100%までの外国直接投資を認め、49%までは自動ルート、49%を超える場合には政府ルートによるものとしました(非居住インド人は100%まで自動ルート)。

 

7 民間セキュリティー  

 プレスノートは、「民間セキュリティー」について規定する5.2.13項を改定しました。  

 政府ルートにて認められていました。プレスノートは、出資比率上限を49%から74%まで引き上げ、49%までは自動ルート、49%から74%までは政府ルートによるものとしました。 8 単一ブランド小売業  プレスノートは、「単一ブランド小売業」について規定する5.2.15.3項を改定しました。  

 出資比率が51%を超える形で単一ブランド小売業分野に外国直接投資を行う場合、商品購入価値の30%はインド国内で調達されなければならないという制限が課されています(ソーシング・ノルマ)。この例外として、これまでは、単一ブランド小売業を営む企業の製品が最新かつ最先端(“state-of-art” and ”cutting-edge”)であり、現地での調達が不可能な場合には、政府はソーシング・ノルマを緩和することができるものと規定されていました。

 プレスノートでは、単一ブランド小売業を営む企業の製品が最新かつ最先端(“state-of-art” and ”cutting-edge”)であり、現地での調達が不可能な場合、ソーシング・ノルマが事業の開始(第一店舗の開店)から3年間適用されないものとされました。

 

8 製薬業  

 プレスノートは、「製薬業」について規定する5.2.27項を改定しました。  

 従前は、製薬業分野に対する外国直接投資は、新規事業に関しては自動ルートにて100%までの出資が認められていたのに対して、既存事業へ投資は政府ルートにて100%までの出資が認められていました。  

 プレスノートは、既存の製薬業への投資条件を緩和し、74%までは自動ルート、74%を超える場合は政府ルートによるものと改定しました。ただし、製薬業分野における既存事業への投資条件として、製品水準及び研究開発費の維持、技術移転情報の報告義務が新たに課されました(5.2.27.3(iv)(a)~(c))。

 

 2016年6月24日付プレスノートNo.5の原文はこちら

 

棚瀬法律事務所 デリー駐在弁護士 遠藤 衛

投稿者: 棚瀬法律事務所

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